所有はすれども経営せず。
これを上手に実行する仕組みはないか。
オーナーとは、家族のために、先祖伝来の、あるいは、自らが営々と築き上げた財産を、経営することがそのミッションである。
経営というものはサイクルであり、止めることができない。
大きな力のあるものを止めることは、いわばエネルギーと情報の散逸を招き、二度とは元に戻らなくなるものであるからだ。
そんなオーナーの止めることができないミッションを果たすこととオーナーの地位の継承は、裏表の関係にある。
その地位の継承を上手にやることがオーナーの責務である。
オーナーの地位の承継という責務を全うする方法を紹介しよう。
【財産の法人化】
財産の法人化という手法がある。これは後継者に法人を設立させて、その法人に財産を映すというものだ。法人そのものは、だれでも、すぐに、しかもかなり安く設立できる。法人に財産を移してしまえば、経営は後継者の責務となる。
所有と経営をすべて次世代に移すことになるが、財産の受け皿は法人であるので、オーナーは理事(取締役)として経営に関与し、段階的に経営を移行していくことが可能になる。
デメリットは、法人に財産を移す際に、法人はオーナーに対価を払う必要があること、そして、オーナーに譲渡税がかかることだ。
このデメリットを回避する方法はないが、このインパクトを低減する方法はいくつかあるが別の機会に紹介する。
【財産の信託化】
もうひとつの方法として財産の信託化がある。これは財産を法律上の所有権と税務上の所有権を分離し、後継者に法律上の所有権を移すというものだ。
この方法により所有権を移す際の対価や譲渡税課税なく、オーナーの地位承継が可能になる。
いわば所有(財産からの利益をすべて受ける)すれども経営せずというわけである。
デメリットは、信託そのものが法人と比べて日本においてはまだ普及しておらず、後継者が財産経営者としていろいろ取引をする際にスムーズにいかない可能性があることだ。
たとえば、信託財産をつかって、土地に建物を建てようとするときに、建設会社、金融機関、市区町村などとやりとりが発生するが相手方がどこまで信託を理解し、対応してくれるのか未知数なところがある。
以上の二つがオーナーの責務としての地位承継問題のソリューションの典型例である。その他の方法はこの変形応用といっても過言ではない。この二つのどちらが必要、可能であるのかしっかり見極めて選択してほしい。